「地域通貨」や「コミュニティマネー」という言葉を聞いたとき、
「それって本当に意味あるの?」
「仕組みが難しそう」
と感じる方も多いのではないでしょうか。
実のところ私も”地域通貨”という言葉すら知りませんでした。
都会で暮らしていると、すべての価値をお金という一つのものさしで測ってしまいがち。
お金がなくても心豊かに支え合えるまちは、本当に存在するのでしょうか。
この記事では、地域通貨の仕組み・意義・そして“わたしらしい豊かさ”について、
酒田での体験も交えながら考えていきます。

地域通貨って、ありがとうを形にする仕組みなんです。
そもそも地域通貨ってどんな仕組み?|信頼を可視化するツール
結論からお伝えすると地域通貨とは、特定の地域の中だけで使える通貨であるもの。
お金が地域外へ流出するのを防ぐことも兼ねていますが、目的は単に地域経済を活性化することではなく、地域活動の活性化やコミュニティの強化する仕組みでもあります。
大切なのは”地域コミュニティの中で人と人の信頼やつながりを深める”こと。
お金というよりも“人の想いが行き交う仕組み”と考えると分かりやすいかもしれません。
地域通貨の仕組みと活用例
地域通貨には、形や使われ方にいくつかのタイプがあります。
それぞれに、地域の個性や目的が込められています。
| 種類 | 特徴 | 目的の軸 |
| 紙幣型 | 商店街などで使える共通通貨 | 地域経済の活性化 |
| 電子型 | アプリ型の地域コイン | 利便性・地域循環 |
| ボランティア型 | 助け合いの行動を可視化 | 信頼・共助の促進 |
デジタル型(電子マネー型)
スマートフォンアプリやQRコードなどを使って利用する形式。
地域の店舗で利用することでお金が地域外に流れるのを防ぎ、地元経済を循環させることができます。
地域通貨は以下のような例です
- さるぼぼコイン(岐阜県)
飛騨地方の伝統人形「さるぼぼ」をモチーフにしたデジタル通貨。地域観光と地元商店の連携を強化しています。 - せたがやPay(東京都世田谷区)
アプリを使って地元の店でキャッシュレス決済を促進。行政や地域事業者が連携し、地域経済の循環を実現しています。
ボランティア・助け合い型
「お手伝い」や「地域活動」など、人の行動に対してポイントやチケットを発行し、それを別の場で使えるようにする仕組み。
たとえば、買い物の手伝いや清掃活動を通して得たポイントを、商店街での買い物や地域イベントで利用することができます。
この形の通貨は、「誰かのために動いたこと」や「ありがとうの気持ち」を見える化することを目的も兼ねています。
通貨ではなく“関係をつなぐ”仕組み
地域通貨は“経済を回す”ための仕組みではなく、“心をつなぐ”ためのツールです。
「お金のやり取り」を通して「ありがとう」や「うれしい」が循環していく。

エシカルな地域づくりの新しいかたちなのです。
地域通貨が生む目に見えない豊かさ|心のゆとりと孤独の解消
地域通貨の魅力はお金を使うことよりも、人と心を通わせることにあります。
顔の見える人と取引をすることで、
「この人の作るものを買いたい」
「このお店を応援したい」
そんな気持ちが自然と生まれます。
お金だけでは決して得られない、“心のぬくもり”や“ゆるやかなつながり”が、地域通貨を通して少しずつ育っていくのです。
酒田で感じたありがとうの循環
私が酒田で活動していたころ「地域支え合い活動推進事業」という事業を取り組んでいた自治体がありました。
- 琢成学区地域支え合い活動
⇒よろずや琢成(チケット制)でのサポート - 日向地区地域支え合い活動
⇒一斉除雪と居場所づくり
琢成学区では手助けが必要な住民がチケットを購入し、お手伝いをした人(サポーター)にそのチケットを渡す仕組みがありました。
お金の代わりに受け取るのはチケットと”ありがとう”という気持ち。
そのチケットを手にした瞬間、“取引”ではなく“信頼のやり取り”が生まれていることに気づきました。
お手伝いの後に交わす「いつもありがとう」という言葉は、
数字には残らないけれど、心を満たしてくれる豊かさがあるかもしれません。
孤独ではないと感じられるまちへ
地域通貨が生み出すのは、経済の活性化だけではありません。
「自分は誰かとつながっている」
「必要とされている」
そんな実感が孤独をやわらげ、心のゆとりを育ててくれるのです。
忙しい日々の中で忘れがちな、助け合う安心感と心の交流。
それこそが、私が酒田で見つけた“エシカルな地域の豊かさ”だと思います。

「誰かのために動く」その心地よい行動が地域のエネルギーにも、あなたの心の豊かさにもなります。
地域通貨の本当の価値|信頼を育てること
地域通貨がまちの中を回れば回るほど、そこで生まれるのは取引の数字だけではなく、人と人との信頼という見えない財産です。
この仕組みの根底にあるのは、お金があるからできるという資本主義的な考え方ではなく、お互いを信じ合い、支え合うことで成り立つという、やさしい共助の精神。
地域通貨は人とのつながりそのものを循環させるための仕組みなのではないでしょうか。
信頼が巡るバトンのような関係
私が実際に体験した酒田の支え合い活動では、誰かを助けてもらった人が、次は別の誰かを助ける側になっていました(地域通貨はありませんでしたが)
そうして生まれるのはありがとうが巡る温かい連鎖
地域通貨は想いをつなぐ信頼のバトンのような役割を果たしています。
それは誰かを想う気持ちを地域全体で循環させる、まさに“エシカルな地域づくり”の理想形です。

“信頼”が通貨になる社会。それが地域通貨の本当の姿です。
完璧じゃなくても意味がある|対話が財産になる
地域通貨には多くの可能性がありますが、
一方で、現実的な課題も少なくありません。
使えるお店が限られていたり、アプリなど利用方法が分かりづらかったり。
導入したものの、運営コストや人手の問題から継続が難しくなってしまうケースも実際にあります。
「理想は分かるけれど、うまく回らない」
そんな声が現場から上がるのも当然のことです。
完璧じゃなくてもいいという視点
それでも私が強く感じるのは、地域通貨は“完璧に成功しなくても、意味がある”ということ。
大切なのは結果ではなく、やってみようと動き出すプロセスそのものだと私は思います。
ただ行政から見れば”結果”がすべてになりますが。。
地域通貨を導入することで、
「どうすれば助け合いが続くのか」
「お金の循環って何だろう」
そんな問いが生まれ、地域の人たちの対話が始まります。
たとえ仕組みが途中で止まっても、その試行錯誤の中で芽生える“考える時間”と“つながり”こそ、地域が前に進むきっかけになるのです。
酒田で感じた対話という財産
私が地域おこし協力隊で関わった活動でも、どうしたら地域が助け合えるかを話し合う時間が、何よりも大きな学びでした。
人それぞれ意見あるものの
「一緒に考える・話す・笑う」
というプロセスこそ、まちを少しずつ動かしていく力になる。
そう気づいたとき、他の地域で行っている地域通貨の“意味”が見えた気がします。

“やってみる”こと自体が地域を前に進めます。
お金以外の価値を見つけたとき、まちは変わる:エシカルな豊かさの定義
お金はもちろん大切です。
それが目的になってしまうと、私たちはいつの間にか「人とのつながり」や「感謝の気持ち」を後回しにしてしまいがちです。
「お金=目的」ではなく「つながり=目的」
交換”ではなく、共有や共助を中心にした、やさしいエシカルな経済の形が、少しずつ広がっていくのです。
“お金以外の価値”が、まちを変える
信頼、つながり、感謝。
どんな高価なものよりも、まちを支え、人をやさしく強くする力です。
私たちがこの“お金以外の価値”に気づいたとき、まちは目に見えないところで変わり始めます。
助け合いが生まれ、心のゆとりという豊かさが育っていくのです。

つながりが増えるほど、まちは豊かになる。
まとめ|「ありがとう」がまちをめぐる。これが“わたしらしいエシカル経済”の形
地域通貨は経済の数字を動かすための仕組みではありません。
その本質は人の心を動かす仕組みです。
「ありがとう」や「助け合い」の気持ちが、まちの中をめぐりながら信頼の輪を広げていく。
心で支え合える社会は、決して遠い理想ではありません。
それは、あなたの小さな一歩から始まっています。
“できることから”でいい。あなたの一歩がまちを動かす
完璧を目指す必要はありません。
今日からできる、小さな選択を意識してみましょう。
- 地元の商店で顔の見える買い物をしてみる
- 近所の清掃やイベントにお試しで参加してみる
その一歩が「ありがとうの循環」を生み出し、まち全体のエシカルな豊かさ、そしてあなた自身の心のゆとりへとつながっていきます。

お金を回すより、ありがとうを回す。それがエシカルなまちの豊かさです。