災害は、いつ・どこで起こるか分かりません。
高齢者や要介護者など「もしも」の時に支援が必要な人がいる家庭にとって、”備える”という言葉はプレッシャーに感じられることがあります。
私自身も地域おこし協力隊、在宅介護を経験し、その不安を身をもって感じています。
「自分がいない時に何かあったら…」
という思いは、決して他人事ではありません。
そこで記事では防災×福祉という視点から、忙しい日常の負担にならず、心のゆとりを育む「共生の仕組み」を酒田での体験をも交えて紹介します。

助ける・助けられるではなく、支え合う心のつながりを日常の中で育てたいですね。
防災×福祉という考え方|キーワードは共助とエシカルな共生
これまでの防災対策は、自分の命は自分で守る”自助”、そして行政や自衛隊が担う”公助”が中心でした。
しかし今、誰も取り残さない地域づくりを実現するうえで注目されているのが、地域の人同士がお互いを支え合う共助です。
共助の考え方が広がることで防災は特別な準備ではなく、「日常のつながり」そのものが命を守る力へと変わっていきます。
防災と福祉をつなぐ“エシカルな共生”
福祉の現場でも、要支援者を地域全体でゆるやかに見守る「共生社会」への転換が進んでいます。
これは厚生労働省が推進している取り組みの一つとなります。
「地域の命を守る防災」と「日常の暮らしを支える福祉」を結びつける。
“防災×福祉”の発想
この発想こそ、エシカルな共生の仕組みの根幹であり、支え合いを通して人と人が安心して暮らせる地域を育てるポイントです。
私自身の経験から
在宅介護を経験していいる際、地震や火災。
いつ何が起きてもおかしくありません。
「もしもの時、どう守れるだろう」
と考えることもありました。
ただ共助の仕組みは“他人を助けるため”だけではなく、最終的に自分自身を守るためでもあるということ。
共助は安心と心のゆとりを支える“エシカルな防災”の基盤なのです。
防災×福祉が求められる4つの背景
- 高齢化・独居世帯の増加:災害時に要支援者が孤立するリスクの拡大
- 気候変動による災害リスクの上昇:備えの仕組みを“日常化”する必要性
- 地域のつながりの希薄化:顔の見える関係を意識的につくり直すことが重要
- 行政・公助の限界:発災直後の数日間は、地域内の支え合いが命綱となる

防災も福祉も誰かのためがみんなのためになる考え方ではないでしょうか。
酒田で見た支え合う地域のリアル:日常に溶け込む共助のデザイン
日常の延長にある防災
私が活動していた地域山形県酒田市では、コミュニティ振興会や自治会を中心に、「防災を日常に溶け込ませる」取り組みが進んでいました。
特別な訓練やイベントではなく、高齢者のゆるやかな見守りや地域行事の中での防災体験ブース
「防災×福祉」連携による避難所運営の練習などが実際に行われていたのを覚えています。
どれも“顔の見えるつながり”を活かした地域全体での実践でした。
備えは知識ではなく習慣である
酒田で暮らしていたある年のこと。
大雨による避難指示が出たとき、私は初めて「日常の訓練」が命を支える瞬間を体験しました。
日頃からの見守りで確認していた避難経路や避難場所。
近所の方との声かけ、そして連携していた町内会のLINE連絡網。
それらが自然と機能し、誰一人取り残されない避難ができたのです。(本当の話)
この経験から、私は防災とは知識ではなく”習慣”であり、その基盤にあるのは「心のゆとり」だということを強く感じました。
少し内容は異なりますが、以下は私が酒田市から引っ越したあとに発生した2024年7月の大雨についてリアルな状況です。当時同じ協力隊として活動していた方の動画です。
YouTube>>2024年07月28日撮影 酒田市・大沢地区の豪雨被害状況
共助のデザインが生きる地域の実践
酒田の地域コミュニティでは”共助”をデザインとして根づかせるための小さな取り組みが数多くありました。
それぞれの地域独自で実際に行った防災×福祉をまとめました。
- 多世代交流: 子どもたちが避難所カフェを開き、お年寄りとの交流で心の負担を和らげる。
- 多職種協働: 地元企業と福祉施設が物資の備蓄・運搬を分担し、行政では届かない部分を支える。
- 情報の共助: 町内会がLINEグループなどのオンライン連絡網を整備し、災害時の迅速な情報共有を実現。

顔の見える関係があるだけで、いざという時の安心感は全然違います。それこそが防災×福祉の本当の力ではないでしょうか。
共助のデザインで地域はもっと強くなる:心のゆとりを生む仕組みづくり
共助は、災害が起きてから急に生まれるものではありません。
日常の中で意識して育てていく関係の仕組みです。
共助は育てるもの
その仕組みを誰もが無理なく関われる形に落とし込むことが共助のデザインとなります。
具体的には
- 助け合いマップの作成
- 福祉団体との避難支援の連携
- ちょっとした声かけやおすそ分けなど
こうした小さな取り組みの積み重ねが、まちを支える大きな力になります。

制度よりも人の関係がまちを支えます。
わたしらしく力を持ち寄る|支え合う関係
これまでの防災では、「誰が助けるか」「誰が助けられるか」といった二元的な考え方が主流でした。
二元論ではなく共に生きる防災へ
私たちが目指すエシカルな共生社会では、体力・年齢・立場に関係なく、誰もが“わたしらしく”力を貸せる場面があります。
「助ける側」「助けられる側」という区分をなくし、それぞれが自分の得意を活かして支え合う。
地域をしなやかに、強くする源といえます。
“できることを持ち寄る”から生まれる心のゆとり
防災や介護の現場では「すべてを自分が担わなきゃ」と背負い込みすぎることが、心の負担を大きくします。
実際は“みんなで少しずつ”で良いのだと。
それぞれができることを持ち寄ることで、負担を分散しながら、心のゆとりを保って地域と関わることができます。
平時から私にできることを意識しておくことが、災害時のパニックを防ぎ、“共助”を自然に発動できる力になるのです。
多様な人が持つ共助のヒント
| 立場 | わたしらしくできること(共助の一例) |
| 若者 働き世代 | SNSで正確な情報発信、オンライン連絡網の運用、物資の搬送など機動力を活かす。 |
| 高齢者 ベテラン世代 | 見守り・声かけ活動、避難所運営での生活の知恵や地域の歴史を伝える。 |
| 企業 商店 | 備蓄・設備の提供、駐車場や建物を一時的な避難所として開放する。 |
| 子どもたち | 避難訓練や体験イベントに参加し、多世代交流でお年寄りの心を和らげる。 |

助ける・助けられるじゃなく支え合う関係が一番強いんです
やさしさを仕組みにする|持続可能なエシカルな共生の未来
“防災×福祉”の連携は、単なる対策や制度づくりではありません。
それは、地域にやさしさを形として根づかせるエシカルな社会です。
行政の力だけでは限界があります。
だからこそ、市民・企業・学校、そして地域コミュニティ全体が「わたしらしく」手を取り合うことが大切なのです。
「支え合い」が“特別な活動”ではなく、“日常の文化”として息づく社会。
それが、これからの共生の理想です。
心のゆとりが未来を支える
この文化が根づけば、
「もしもの時も、きっと誰かが見ていてくれる」
そんな安心感と信頼が、まちに広がります。
それは、防災や福祉を超えて、人と人が支え合う持続可能な地域社会の基盤となります。
完璧を目指すのではなく、“ゆるやかにつながり、思いやりを分かち合う”ことこそ、エシカルな未来をつくる原動力なのです。

やさしさが続く仕組みをつくること。それも防災の一つ。
まとめ|支え合いが強い備えになる。心のセーフティネットを育む習慣
本当の防災は高価な備蓄でも最新の設備でもありません。
もちろん備蓄は重要です。
人のつながりという温かい絆を育てること
福祉の視点や私自身の在宅介護の経験から見て、日常の中で築く小さな助け合い(共助)こそが、
災害時に誰も取り残さないための命綱になりえるのではないでしょうか。
“わたしらしく”関わることで、心の距離が近づく
大切なのは制度やルール
これは間違いありません。
エシカル目線で言うなら
”心の距離を近づけること”
無理をせず“わたしらしい”関わり方でお互いを気にかけ合う習慣が生まれれば、それは災害時だけでなく、孤独や不安を抱える日常にも強くて優しい心のセーフティネットになります。
未来へ続く「エシカルな助け合い」へ
助け合いは特別なときのためではなく、日々の暮らしの中で育てていくもの。
挨拶を交わす、声をかける、気にかける。
その一つひとつが、あなた自身と地域全体の安心を支える力になります。

助け合いは特別な時のためじゃなく毎日の習慣として育てていきたい