介護という言葉を聞くと、多くの人が「大変だ」「つらい」といったネガティブなイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。
事実ですが。
私自身も父の在宅介護に追われ、心が折れそうになったことが何度もあります。
正直に言えば、、今でもつらいと感じる瞬間はよくあります。
それでも、そんな奮闘する日々の中で改めて学んだのは、「ありがとう」という温かい言葉や感謝の思いでした。
その一言を受け取った瞬間、疲労で固まっていた心が楽になり、介護が単なる義務ではなく、人生の豊かさを見つける時間へと変わったのです。
この記事では、私にとって「ありがとう」がどれほど大きな力になったのか、そしてそれが介護者自身のウェルビーイングを育むヒントになることを体験談とともにお伝えします。
介護の合間に見つける心が温まる「ありがとう」の瞬間
介護生活には心が折れそうなほど大変な日もあります。
そんな日々の中にも、心を温めてくれる”ありがとう”の瞬間が隠れているのです。
私が実際に感じた感謝のかたちをご紹介します。
言葉を超えて伝わる小さな感謝のサイン
「ありがとう」と直接言葉にされなくても、心が温かくなる瞬間はたくさんあります。
それは被介護者が精一杯伝えてくれる、言葉を超えた感謝の表現です。
- 食事を終えた後の満足したとき
- 清拭した後に見せる気持ちよさそうなうなずき
こうした小さなサインが胸の奥にじんわりと伝わり、やってよかったと思える満たされた気持ちを運んでくれます。
たまに本人が調子乗るときは怒りますが(笑)
介護される側が伝えてくれる言葉の力
直接「ありがとう」と言われたときの力は、想像以上に大きいものです。
ある日、父が食事を終えた後、とても小さな声で「助かったよ、ありがとう」と呟いたことがありました。
その一言を聞いた瞬間、これまでの苦労が報われるように感じました。
たった一言でまた明日も頑張ろうという力が湧いてきたのです。
第三者からの「ありがとう」が心に響いた場面
介護の孤独を感じているとき、第三者からの感謝の言葉は特に深く心に響きます。
ケアマネージャーさんや訪問介護の方、地域の支援者まで
〇〇さん、いつも本当によく頑張っていますね。ありがとう
と声をかけられたとき、自分の努力が認められたようで心が救われた気がします。
そもそもお礼を言うのは私の方ですよね。
頑張っている自分を客観的に見てくれる人がいる
その安心感は介護者にとってかけがえのない心の栄養となり、ウェルビーイングを保つ大切な支えになるのです。
介護を続ける力になった3つの効果
「ありがとう」というシンプルな言葉には、介護者の心を癒やし、介護を続けるためのエネルギーを与えてくれる力があります。(たぶん)
その言葉がもたらした3つの効果をお話しします。
- 魔法の言葉
- モチベーション
- 支え合う関係
1.心の負担を軽くする「魔法の言葉」
介護生活では不安や焦り”もっと頑張らなければ”というプレッシャーが常に心に積もります。
しかし、被介護者や家族、支援者からの「ありがとう」という言葉ひとつで、その重荷がふっと軽くなる瞬間があります。
感謝の言葉は、
「努力が報われている」
「頑張りが認められている」
と実感させてくれるもの。
介護者が心のゆとりを保ち、ウェルビーイングを育むための、心のビタミン剤のような存在です。
2.介護を続けるための強いモチベーションになる
介護は終わりが見えないマラソンのようなもの。
正直、在宅介護はやるものではないと私は思っていますが、それでもやらなくてはいけません。
そんな中で「やってきてよかった」と心から思えるのは、感謝の気持ちを受け取ったときでした。
”ありがとう”という言葉がどれほど前向きになれたか。
この肯定感こそが辛い時でも前を向き、介護を投げ出さずに続けるための揺るぎないモチベーションとなります。
3.関係性を支え合う関係に変える
「ありがとう」のやりとりは、介護を一方的に「してあげる」という関係から、”共に支え合う時間”へと変えてくれます。
感謝を交わすことで、家族や介護者、被介護者の間に温かな感情が流れ、絆が深まるはずです。
介護を「わたしらしく」心地よく続けるための健全な環境づくりにつながります。
私が「ありがとう」に救われた3つのエピソード
「ありがとう」という言葉の力は、頭で理解する以上に心を深く癒やしてくれます。
ここでは、私が介護のなかで実際に経験し、今でも忘れられない、心に刻まれた3つの感謝の瞬間をご紹介します。
1.疲れ果てた深夜にかけられた一言
介護で最も辛いのは夜間にケアが必要なときかもしれません。
ある夜中に父が騒ぎ始めてオムツ交換をしたとき、私は心身ともに疲れ果てていました。
しかし翌日、母が「昨日の夜、本当に助かったよ、ありがとう」と静かに言ってくれたのです。
その瞬間、夜通しのケアを行ったのは良かったと感じました。
この一言は、私の頑張りが無駄ではなかったことを証明してくれたのです。
2.寡黙な父からの思いがけない感謝
父は普段、あまり口数の多い人ではありません。
だからこそ、ある日ふいに父が 「いつもありがとうな」 とつぶやいたときは、本当に驚きました。
飾り気のない心からのその言葉に、思わず胸が熱くなりました。
「続けてよかった」
「この人のために頑張れている」
と心から思えた瞬間。
その思いがけない感謝は、私のウェルビーイングを大きく満たしてくれた、かけがえのない宝物です。
3.完璧じゃなくていいと自分を許せた体験
介護は毎日が試行錯誤の連続です。
「今日はもっと優しくできたはず」
「あのケアは失敗だった」
「オムツの取り換えを失敗してしまった」
などと、自分を責めて落ち込んでいた日もありました。
そんなとき、母が「いつも本当にありがとう」と声をかけてくれたのです。
「完璧じゃなくてもいい」
母は、私の不完全なケアではなく”私という存在がそばにいること”に感謝してくれていたのです。
この「ありがとう」のおかげで、私は自分を許し、「わたしらしく」無理なく介護を続けられるようになりました。
今日からできる!「ありがとう」を増やす暮らしのヒント
感謝の気持ちは、ただ待っているだけでは増えません。
意識的に行動することで、あなたの介護生活に「ありがとうの瞬間」を増やすことができます。
ここでは、すぐに取り入れられる3つのヒントをご紹介します。
1.小さなことでも感謝を言葉にする
「言わなくても伝わるだろう」ではなく、あえて言葉にして感謝を伝える習慣を持つことが大切です。
被介護者へ
「お茶を飲んでくれてありがとう」
「薬を忘れずに飲んでくれて助かったよ」
家族や支援者へ
「話を聞いてくれてありがとう」
「ゴミ出しをしてくれて助かったよ」
小さな感謝の言葉は相手の行動を認めることにつながり、相互扶助のエシカルな関係を築く第一歩となります。
そして、感謝の言葉は言う側も言われる側も、心を温かく満たしてくれます。
2.日記やメモに「ありがとう」を書き留める
日々の忙しさの中で、感謝の瞬間はつい見過ごされがちです。
そこで、その日の「ありがとう」をノートやメモに書き出してみましょう。
「自分はこんなに多くの人に支えられている」
「小さな幸せがたくさんある」
書き出すことで再認識できます。
これは介護のネガティブな感情に引っ張られにくくなるだけでなく、自分のウェルビーイングを守るための、簡単なセルフケアになります。
3.家族や仲間と感謝を伝え合う習慣をつくる
「ありがとう」を互いに伝える習慣は、家族の絆を強め介護を続ける強固な土台になります。
意識して感謝を伝え合うタイミングを設けることで介護は”義務”ではなく、共に歩む時間へと変わるかもしれません。
感謝のやりとりが習慣になれば、介護者自身の心も満たされ、
無理なくわたしらしいペースで介護を続ける力になるでしょう。
まとめ|ありがとうがある介護は人生を豊かにしてくれる
正直なところ在宅介護を始めるまで「ありがとう」という言葉に、そこまで深い思い入れはありませんでした。
けれど多くの方に支えられ、父の介護をここまで続けてこられた今、その言葉の重みを心から感じています。
この場を借りますが、ご支援くださっているすべての方々に、改めて感謝を伝えたいと思います。
感謝は特別な出来事ではなく、日々の小さな瞬間に隠れています。
その一つひとつに気づき、大切にすることが、介護を単なる負担ではなく、人生の豊かさを見つける時間へと変えてくれるのです。
「ありがとう」という温かなやりとりは、介護する人の心を満たし、被介護者に安心感を与える。
その感謝の循環こそが「わたしらしく」心地よく介護を続けるための道しるべになるのではないでしょうか。

あなたが最近、介護の中で感じた “ありがとう” は、どんな瞬間でしたか?
最後まで見ていただきありがとうございました。