認知症ケアでは私たちはつい”できないこと”ばかりに目が向きがちのような気がします。
「以前のように話せない」
「もう無理かもしれない」
そんな不安や喪失感で、心が落ち込んでしまうこともあるでしょう。
私自身もあれだけ仲の良かった祖母の認知症の進行にショックを受け、先の見えない不安から体調を崩した経験があります。
また父は脳梗塞の後遺症で認知機能に影響が出ており、日々の介護の中で葛藤が絶えません。
私自身その経験を通して気づいたのは、本当に大切なのは「その人らしさ」と「尊厳」を守ることだということ。
この姿勢こそが相手を尊重するエシカルなケアにつながり、結果的に介護者自身の心をも軽くしてくれるのです。
この記事では、私が悩みながら学んできた“心が楽になる関わり方”と、被介護者の尊厳を守るためのヒントをご紹介します。
もちろんこれが絶対に正しいというわけではありません。
人それぞれの認知症の度合いも違いますし価値観も違います。参考程度に見ていただければ幸いです。
認知症になっても尊厳を守るケアが大切な理由
認知症の症状が進むと”もう以前のようには戻らない”と諦めそうになる瞬間があるかもしれません。
しかし病状に関わらず「その人らしさ」と「尊厳」を守ることが、認知症ケアにおけるエシカルな基本姿勢であり、本人と介護者の心を支えてくれます。
1.認知症になっても「一人の人」であることは変わらない
病気が進行しても、目の前にいるのはあなたの大切な家族であることに変わりはありませんよね。
「できない部分」や「症状」ばかりに目を向けると、つい患者として見てしまいがちな気がします。(私だけかもしれませんが)
その人が歩んできた人生や個性を持つ一人の人間として接することが大切
この姿勢が、本人の心の安定につながるはずです。
2.できることを奪わない姿勢が心を支える
「危ないから」
「時間がかかるから」
わずかに残された「できること」まで取り上げてしまうと、生きる意欲や自信を失ってしまいます。
- できることは任せてみる
⇒服選び、ボタンを留めるなど、時間がかかってもできる作業は任せましょう。 - 主体性を尊重する
⇒この姿勢は「自分はまだ役に立っている」「ここにいていいんだ」という安心感につながります。
実際に簡単にできる洋服選びはよくさせていたのを覚えています。
ただ火の元だけは危険なため触らせませんでしたが、いかに納得させるか難しいんですよね。
3.尊厳を守ることが心地よい関わりを生む
父が同じ話を何度も繰り返すとき、私は「もう話が通じないのかな」と落ち込みました。
内容そのものではなく伝えたい気持ちを受け止めるように心がけると、父は安心したように穏やかな笑顔を見せてくれたのです。
尊厳を守るケアとは”正しい・間違っている”ではなく、相手が何を思っているかに寄り添うことだと私は思います。
この心の通い合いこそが、本人に安心を与え、介護者自身の心も穏やかにしてくれます。
今日からできる!その人らしさを引き出す3つの関わり方
認知症ケアでは「どう接すればいいんだろう」と迷うことが多いかもしれません。
実際に私もネットで検索してましたし。
特別な技術は必要ありません。
大切なのは本人の「その人らしさ」を引き出し、介護する側の心も楽になる関わり方です。
ここでは、すぐに実践できる3つのヒントをご紹介します。
- ライフヒストリー
- 小さな意思決定を尊重する
- 間違いを正すより気持ちを受け止める
1.ライフヒストリーを知る(過去の生活や価値観を理解する)
その人が歩んできた人生を知ることはケアの質を大きく高めます。
たとえば過去の職業、好きだった趣味、大切にしてきた価値観を知っておくと、会話の糸口が見つかり、不穏な行動の理由が理解できることもあります。
これは、その人の個性を尊重するエシカルケアの基本です。
アルバムを一緒にめくる思い出話に耳を傾ける。

その人らしさを取り戻すきっかけになるかもしれません
ちなみに私の場合、父は昔の競馬(馬)が好きだったのであえて”ウマ娘”のキャラクターを見せて問題を出したり、どんな馬だったのか語ってもらったりしています。
トウカイテイオーだったりオグリキャップだったり。
なんで女の子になってるのと毎回突っ込まれますが。
2.小さな意思決定を尊重する
ひどい認知でなければ「自分で決めたい」という主体的な気持ちは残っています。
その尊厳を守るために、日常生活の中で小さな選択を尊重するのも良いでしょう。
- 「どの色の服にする?」など2~3個の選択肢を提示する。
- 「散歩に行く?それとも音楽を聴く?」と、その日の過ごし方を本人に選んでもらう。
小さな意思決定の積み重ねが、自信と安心感を育ててくれます。
3.間違いを正すより気持ちを受け止める
認知症の方の言動は間違いが多いです。
以前、父が「家の後ろに競艇がある」と現実とは異なることを言ったとき、
私はつい「そんなことあるわけない」と否定してしまいました。
すると父の表情は曇り、気持ちが離れてしまったのです。
しかし、事実ではなくその裏にある気持ちに目を向けるように変えてからは関わり方が一変しました。
「そうか、〇〇なんだね」とまずは受け止める。

不安や訴えといった感情に寄り添う。
この姿勢が、本人を安心させるだけでなく、介護する側の心も軽くしてくれるのです。
私が実践した心の整え方とコミュニケーション術
認知症ケアでは、こちらの意図が伝わらず、ついイライラしてしまうことがあります。(私はしょっちゅうですが)
その感情を否定する必要はありません。
大切なのは気持ちを上手にリセットする方法を知っておくこと
ここでは介護者自身の心を守るためのヒントをご紹介します。
- 会話のトーンや目線を合わせることで生まれる安心感
- イライラしたときの「心の冷却」リセット術
- 小さな「ありがとう」を伝える習慣
1.会話のトーンや目線を合わせることで生まれる安心感
本人とのコミュニケーションでは、言葉以上に「非言語的な要素」が安心感につながります。
- 優しい声と穏やかな表情
- 目線を合わせる
私もさまざまな介護施設を訪れ職員を見てきましたが、横柄な方は少なく(当たり前ですが)皆さん懸命に勤めている印象を受けました。
例えば、立ったまま見下ろすのではなく、かがんで同じ高さで話したりしているところを見かけたりもしました。
「あなたの話を大切に聞いています」というメッセージが伝わり、信頼関係が深まりますよね。
2.イライラしたときの心の冷却リセット術
介護では気持ちが噛み合わず感情的になりそうな場面が多々あります。

私自身も、何度も爆発(キレそう)しそうになったことか(笑)
そんなときに役立ったのが「心の冷却術」です。
- 深呼吸で「間」をつくる
感情が高ぶったら、一度言葉を飲み込み、ゆっくり深呼吸を数回 - 席を外す勇気
「ちょっと出てくるね」と伝えて場を離れ、公園で体を動かすなど。
筋トレや散歩で神経が落ち着き、リセットできます。 - 小休憩を取る
5分でもいいのでお茶を飲むなど、強制的に介護から意識を切り離す時間を持ちましょう。
3.小さな「ありがとう」を伝える習慣
介護は「してあげるもの」と思いがちですが、介護する側からの感謝もとても大切です。
「食事を手伝ってくれてありがとう」
「今日は笑ってくれてありがとう」
こうした小さな”ありがとう”は、本人の尊厳を尊重する姿勢につながり、相手に安心感を与えます。
そして、介護者自身の心も温かく満たされ、ウェルビーイングを守る大切な習慣になります。

私個人として”ありがとう”という言葉の大切さを介護をしたことで改めて知りました。
家族もケアする人も無理なく続けるために
認知症ケアは長期にわたる旅です。
本人の尊厳を守ると同時に、介護者自身のウェルビーイングも大切にしなければ、誰も心地よく続けることはできません。
無理なく介護を続けるための、エシカルで賢明なヒントをご紹介します。
- 完璧にやらなきゃと思わなくていい
- 外部サービスや専門職に頼る勇気を持つ
- 介護者自身の尊厳も守ることが大切
1.完璧にやらなきゃと思わなくていい
介護に正解はありません。
日によってご本人の状態が変わるように、介護の形も変わって当然です。
私の家庭とあなたの家庭でも違います。
ただ
「今日は話を聞いてあげられなかった」
「食事の準備が手抜きになってしまった」
このように自分を責める必要はありません。
大切なのはできなかったことではなく、
「今日は笑顔が見られた」
「少しでも寄り添えた」
といった”できたこと”に目を向けることが大切だと私は思います。
2.外部サービスや専門職に頼る勇気を持つ
介護を一人で抱え込もうとすると、必ず限界が訪れます。
デイサービスや訪問介護、ショートステイといった外部サービスは、介護者の心と体を守るための大切なセーフティネットです。
確かに費用はかかりますが、、
活用することで負担が軽減され、心にゆとりが生まれます。
このゆとりが、ご本人と穏やかに接する時間や、自分自身の気分転換につながります。
人に頼ることは弱さではなく、介護を持続可能にするための賢い選択。

自分を大切にするエシカルな行動の一つ
3.介護者自身の尊厳も守ることが大切
介護者も一人の人間であり、自分の人生と感情を持つ尊厳ある存在です。
「介護だから趣味を諦めなきゃ」
「自分の体調不良は後回し」
自分を犠牲にする必要ないと思います。
無理をせず自分の時間や趣味、休息といった自分の生活や気持ちを大切にすることが、続けられる介護につながるはずです。
あなた自身のウェルビーイングを守り、心を満たすこと。
それが結果として本人への愛情と優しさとなって返ってくると思います。
まとめ|その人らしさを支えるケアこそ尊厳を守る介護
認知症ケアは決して楽な道ではありません。
その過程で本人と介護者の心が通い合う、かけがえのない「尊い時間」を見つけることができます。
大切なのはすべてを完璧にこなそうとしないこと
「完璧でなくていい」と受け入れ、
今、目の前にあるささやかな一瞬一瞬を大切にすることだと思います。
本人の尊厳を守り、その人らしさを尊重する関わり方は、ご本人に深い安心感を与えるだけでなく、介護する側の心にもゆとりと安らぎをもたらします。
これこそが、あなた自身を大切にするエシカルなケアにつながるのです。

あなたの家族の“その人らしさ”は、どんなところにありますか?
その小さな個性を大切にすることが、自分らしい介護を続けるための道しるべになります。
